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スペース・S

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展覧会情報 ─ スペース・S

unformed form 06
2012年 陶 26×23×19 cm

風景についての覚書 ― 吉賀伸の新作について

春の景色。水辺の桜並木、ピンクに染まる山々、たなびく霞。古くから詩に詠われるように、誰もがそのような景色を身体の中にもっている。春だけではない、特に日本は四季折々の印象に変化が大きく、そのような景色を見ながら時の移ろいを感じている。桜を見て春を知り、もっと具体的に別れの季節とか新たな旅立ちのようなことを思い起こし、より個人的な思い出に結びつけ、感傷的になって涙をながす人もいる。
しかし誰もがもっているはずの風景は、確固たる形や色をもつわけではない。眼前の風景が孕む深遠なるイメージに気づいたのは、古今東西、芸術家と呼ばれる人だけである。私たちは、詩や絵画、今日では写真や映像によって風景を再発見しているにすぎない。
吉賀さんはこれまで、人体にはじまり、古代の遺物を連想させる巨大な土塊、磁器の美しい光沢によりながらも想像を絶するボリュームをもった、物語や風景をもとにした仕事を問うてきた。それらは焼成というプロセスが必要な陶土による彫刻である。そのプロセスは必然的に偶然が入り込み、その仕切り直しを想定しながらの制作となる。しかし偶然であるのだから、思うようにいかないのは当然である。それをどのように仕上げるか、自らのイメージをスキルとテクニックによって導くその手法は、伝統的なものでありながらもより革新的なものにならざるを得ない。
今回の大作は「棚田」がテーマだという。アジアの原初的風景を陶によって作り上げるわけだが、これまでの仕事ではっきりしているように、たいへん自覚的な人であり、その造形も決して思いつきではできないものである。その風景の奥底に沈む彼のイメージは、私たちにいったい何を与えてくれるのか。
風景そのものを題材とする人だから、いつかは地球を彫刻するようなことをやってしまうのではないかと、夢見るように予感し、期待しはじめている。


寺口 淳治
広島市現代美術館 副館長

曙光の水田
2013年 陶 45×215×211 cm
unformed form 07
2013年 陶 120×50×50 cm
unformed form 08
2013年 陶 60×115×55 cm
吉賀 伸 よしかしん

    1976
  • 山口県萩市に生まれる
    1999
  • 筑波大学芸術専門学群美術専攻彫塑コース卒業
    第63回新制作展(東京都美術館/東京、第69回展まで毎回出品)
    2001
  • 筑波大学大学院芸術研究科彫塑分野修了
    2002
  • こうばでびじゅつ・Art in Factory2002(川口アートファクトリー/埼玉)
    第3回日本ユーモア陶彫展’02 大賞受賞(セラトピア土岐/岐阜)
    第66回新制作展新作家賞受賞(東京都美術館/東京、第69回も同賞受賞)
    2003
  • 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
    同大学芸術学部彫刻科非常勤助手(2006年まで)
    2004
  • 吉賀大眉・子・孫・三代四人展(萩陶芸美術館/山口)
    2006
  • スキノデリック−彫刻の表層−(東京藝術大学大学美術館陳列館/東京)
    パリ国際芸術都市Cité Internationale des Arts de Parisに滞在
    2007
  • 五島記念文化賞美術新人賞受賞
    五島記念文化財団の助成によりヨーロッパに滞在(2008年まで)
    2008
  • 彫刻・林間学校(メルシャン軽井沢美術館/長野)
    東京藝術大学芸術学部彫刻科非常勤講師(2009年まで)
    2010
  • 五島記念文化財団20周年─美の潮流─(Bunkamuraザ・ミュージアム/東京)
    個展(ギャラリーせいほう/東京)
    2012
  • トウホクノチカラ(西武渋谷店美術画廊/東京)
    個展(MCAA6ギャラリー/栃木)

現在 東北芸術工科大学芸術学部美術科彫刻コース専任講師



吉賀伸展 UNFORMED SENSES(2014年)